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横浜市泉区の歯科 横浜いずみ台病院歯科診療室

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<研究者として・基礎研究編>



歯科部門長の金指です。先週のブログ「研究者として・臨床研究編」に続いて基礎研究者としての自分を振り返ってみます。

基礎研究、私自身今回のブログを書くにあたり調べてみましたが、文部科学省ホームページから検索してみると、「心理の探求」、基本原理の解明や新たな知の発見、創出や蓄積などを志向する研究活動であり、それは誰も足を踏み入れたことのない知のフロンティアを開拓する営みであり、研究者たちは絶えず独創的なアイデアや手法を考案し、試行錯誤を繰り返しながら、少しずつ未知を既知に変えていくものと書かれていました。なんのこっちゃ??ですよね。

私自身、基礎研究を文字でわかりやすく表現する事はできませんので、ノーベル賞を受賞された本庶 佑 京都大学特別教授のお言葉をおかりすると「一番大事なことは、自分が本当になにを知りたいか、いつも意識している」すなわち、「何が知りたいか」を突き詰める事だと思います。
本庶先生はさらに「基礎研究というのは一般に地味で、直接患者さんの治療をするわけでもない。しかし基礎研究を通じて、それが役に立った場合は何百万人という人に恩恵が出るし、そういう意味では基礎研究というのは、私は素晴らしい事だと思う」とも述べられていました。基礎研究についてなんとなくわかって頂ければと思います。

さて、私の基礎研究生活は専門分野である歯周病(組織)再生に関するものでした。その中でも“歯根膜(歯と骨をつなげている組織)細胞”を用いた新しい歯周組織細胞再生治療を基礎研究から開発したいと思っていました。
再生に関する細胞と聞いてiPS細胞を思いつくかたがいると思いますが、私は東北大学大学院医学研究科細胞組織学分野・出澤真理教授と共同研究する機会を頂きました。大変名誉なことに研究を行ないながら、東北大学・医学部の学生さんに対して講義・実習も担当していました。

研究は抜歯した歯から得られる、歯肉、歯根膜、歯髄といわれる組織(この場合も大学の倫理審査委員会の承認、もちろん患者さんの同意が必要です)からiPS細胞の様な“万能細胞(Muse細胞といいます)”を取り出す技術を確立する事でした。この基礎研究成果の一部を学会で発表し歯周病学分野での最優秀研究として評価され写真の賞状と盾を頂けました。
このポスター賞はエントリー時点で歯周病学分野から3つにまで書類選考され、学会当日に選考委員(全国29歯科大学歯学部の歯周病学教授です)による“厳しい質問”を受け、総合討議を行ない、その結果優秀ポスター賞が選考されるのです。大変名誉な賞を頂く事が出来ました。

さらに基礎研究においてはやはり、1つの機関でなく、複数の機関と共同研究する事で、広い視野が広がり、また沢山の研究者と出会えることも私の“宝物”となりました。

近年、日本の科学研究の質が低下していると報道が沢山ありますが、今後次世代の若者、特に歯科界の研究がもっと活発になることを期待しております。

金指幹元




この研究成果は、報告書として提出しなければなりませんが、20課題のうち私の研究を含む5課題が、「革新的でかつ今後さらなる発展が期待出来る研究」として研究大賞を頂く事ができました。

この研究は歯学部歯学科では初めてとなる研究奨励金採択(第36回)そして研究大賞受賞(第7回)という名誉な臨床研究となりました。少し専門的になりますが、この臨床研究は私のライフワークとしている「再生医療」のうち、自己血液を用いた歯周組織再生に関する研究でした(写真は臨床薬理研究振興財団のHPより引用しました)。

もちろんこの臨床研究についても、母校の倫理審査委員会の審査をうけ、大学病院医療情報ネットワークセンターに登録して行なったのはいうまでもありません。

現在日本の研究開発能力が年々落ちてきていると様々なところで報じられています。息子達を含め次世代の若者たちに、改めて日本の研究開発を牽引してもらいたいと願いを込めて今回のブログテーマとしました。
次回は<新薬の開発・治験>をテーマとして取り上げます。


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歯科部門長 金指幹元

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